時間の流れは、いつでもだれにとっても同じ。そう思っていませんか?
実は、そうとは限らないのです。
この不思議な事実を明らかにしたのが、特殊相対性理論でした。
名前は難しそうですが、出発点はとても身近な疑問なのです。
特殊相対性理論ってどんな理論?
1905年に、アルベルト・アインシュタインが発表した理論です。
当時のアインシュタインは26歳で、特許庁で働きながら研究を続けていました。
この理論が向き合ったのは、「光の速さ」にまつわる大きななぞでした。
ひとことで言うと、「動いている人と止まっている人では、時間や長さの感じ方が変わる」という内容です。
名前に入っている「特殊」は、一定の速さでまっすぐ進む場合に話をしぼる、という意味を持っています。
むずかしいという意味ではないので、安心してください。
走る電車の中でボールを投げると
走っている電車の中で、ボールを真上に投げた場面を想像してみましょう。
電車の中の人には、ボールが真上に上がり、そのまま落ちてくるように見えます。
ところが、ホームから見ている人の目には、ボールが電車と一緒に前へ進みながら、山なりに動いているように映るのです。
どちらの見え方も、まちがいではありません。
見る人の立場によって、動きの見え方は変わるのですね。
このように、動きは見る人との関係で決まるという考え方が「相対性」です。
ここまでの話は、アインシュタインより前から知られていました。
困ったのは、光の場合だったのです。
光の速さだけは特別
ふつうの物の速さは、足し算で求めることができます。
時速100キロメートルの電車の中から、前に向かって時速50キロメートルでボールを投げたとしましょう。
ホームの人から見ると、ボールの速さは時速150キロメートルになる計算です。
ところが光には、この足し算が通用しません。
光の速さは秒速およそ30万キロメートルで、1秒間に地球を7周半もする速さです。
この速さは、止まっている人から見ても、光を追いかけて走っている人から見ても、同じになることが実験で確かめられています。
光を追いかけているのに、光の速さは変わらない。
常識ではとても考えにくい話ですよね。
アインシュタインは、この事実をそのまま受け入れました。
そして、光の速さが変わらないのなら、変わるのは時間や長さのほうだと考えたのです。
動いていると、時間はゆっくり進む
ここで、光を使った時計を考えてみましょう。
向かい合わせに置いた2枚の鏡の間を、光が行ったり来たりします。
光が1往復するごとに、「カチッ」と1回数える仕組みです。
この時計を積んだ宇宙船が、とても速いスピードで横向きに飛んでいるとします。
宇宙船の中の人には、光がまっすぐ上下に往復しているように見えるでしょう。
一方、地上から見ている人には、光はななめに進んでいるように見えます。
その分、光が進む道のりは長くなるわけです。
それでも、光の速さは変わりません。
道のりが長いのに速さが同じなら、1往復にかかる時間は長くなりますよね。
つまり、地上から見ると、宇宙船の時計はゆっくり進んでいるのです。
これが「時間の遅れ」です。
宇宙船の中の人にとっては、時計も自分の動きも、いつもどおりに進んでいます。
光の速さに近づくほど、遅れは大きくなっていきます。
電車や飛行機の速さでは、ほんのわずかな違いなので、私たちが気づくことはありません。
もし光に近い速さの宇宙船で旅をして帰ってきたら、地球にいる友だちのほうが、先に年を重ねていることになります。
長さも縮んで見える
変わるのは時間だけではありません。
動いているものは、進む向きに縮んで見えます。
これは「長さの縮み」と呼ばれる現象です。
光に近い速さで飛ぶ宇宙船を外から見ると、前後がぎゅっとつぶれたように短く見えるでしょう。
ただし、宇宙船の中にいる人は、自分の船が縮んだとは感じません。
中にいる人にとっては、すべてがふつうのままだからです。
時間も長さも、見る人の動きとの関係で決まる。
これが特殊相対性理論の大きな特徴です。
有名な式 E=mc²
特殊相対性理論からは、もうひとつ有名な式が生まれました。
E=mc²
Eはエネルギー、mは質量、cは光の速さのことです。
この式は、質量とエネルギーが同じものの別の姿であることを教えてくれます。
光の速さを2回かけた数は、びっくりするほど大きな数字です。
そのため、ほんの少しの質量から、とてつもない大きさのエネルギーが取り出せるのです。
太陽が何十億年も輝き続けているのは、この仕組みが関わっているからです。
身近なところで活躍する相対性理論
実は、スマートフォンの地図に使われているGPSには、相対性理論の考え方が欠かせません。
GPSの人工衛星は、とても速いスピードで地球のまわりを回っています。
そのため、衛星の時計は地上の時計より、ほんの少しだけ遅れるのです。
さらに、重力の影響を考える一般相対性理論による効果も加わるため、計算はもう少し複雑です。
こうした時間のずれを計算で補正しているからこそ、私たちは正しい位置を知ることができます。
もし補正をしなければ、位置が1日で10キロメートル近くもずれてしまうといわれています。
まとめ

最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
ひとつめは、光の速さは、だれから見ても同じだということです。
ふたつめは、動いているものでは時間がゆっくり進み、長さが縮んで見えるということ。
みっつめは、質量とエネルギーが同じものの別の姿だということです。
時間と空間は、いつでも変わらない舞台ではありませんでした。
見る人の動きによって、伸びたり縮んだりするのです。
そんな不思議な宇宙の中で、私たちは暮らしています。
電車の中にもスマートフォンの中にも、アインシュタインの発見は息づいているのですよ。





















